建築撮影の基本とコツ
1. 内観撮影の方法(インテリアフォト)
▶ 内観撮影のポイント
- 空間の広がりを意識し、魅力的に見せる
- 光のバランスを整え、自然な雰囲気を再現
- 構図や高度さを工夫し、立体感を出す
(1) 機材と基本設定
使用機材
広角レンズ(16mm〜35mm)
→ 空間の広角を強調するために必要。
三脚
→長時間露光を使うことが多いため必須。水平・垂直をしっかり合わせる。
レリーズ or 遠隔撮影
→手ブレを防ぐ、よりシャープな写真に。
ストロボ or 外部ライト(必要に応じて)
→ 影を選択、室内の光量を調整します。
カメラ設定
- ISO:100〜400(ごく低い設定)
- 絞り:F8〜F16(被写界深さを深くして、全体をシャープに)
- シャッタースピード:1/2秒〜数秒(光量に応じて調整)
- ホワイトバランス:オートまたはマニュアル(室内照明の色に応じて調整)
(2) 光の活用
自然光を優先する
→窓から入る光を活かすことで、柔らかく自然な印象に。
照明を相談した演出
→ シャンデリアや間接照明の温かみを取り入れ、雰囲気を出す。
光のバランスを考える
→ 窓の外が白飛びしないように、**HDR撮影(露出を変えて複数枚撮影し合成)**を活用します。
(3) 構図とアングル
基本は水平・垂直を意識する
→壁や床が傾かないように注意して調整します。(Lightroomなどで補正可能)
撮影の高さは約120〜140cm
→ 人の視点に近く、自然な構図になる。
考えるために手前の要素を活用
→ソファやテーブルをフレーム内に入れることで立体感を強調。
対角線構図や三分割法を活用
→ 何気ない写真にならないよう、構図にこだわる。
(4)インテリアごとの撮影テクニック
- リビング:広さを強調しつつ、家具の配置を意識。
- キッチン:シンクやカウンターの清潔感を大切に。
- 寝室:落ち着いた雰囲気を出すために暖色系の照明を活用。
- バスルーム:反射を抑えつつ、清潔感を演出。
2. 内観撮影の撮影ポジション
▶ ポイント
- 空間の広がりを演出するために、最適な立ち位置を把握する
- コントラストの高さを調整し、心地よい良い雰囲気を作る
(1) 基本的なポジション
部屋の四隅から撮る(ダイナミック部屋な構図)
→ 広角レンズで撮影すると、部屋の広さを最大限に表現できる。
部屋の中央から撮る(対称的な部屋でバランスの良い構図)
→ シンメトリー(左右対称)を踏まえた整った印象の写真になります。
ドア部屋のドアの入り口付近から受け取る
→実際部屋に出たときの印象を伝えやすい。
(2)撮影
床から約120〜140cmの高さ(人の目線に近い)
→ ほとんどの室内撮影に適し、自然な雰囲気になる。
ローポジション(床から約50cm)
→ モダンなデザインのインテリアや和室など、床の質感を強調したい場合に有効。
ハイポジション(床から160cm以上)
→ダイニングテーブルやキッチンカウンターなど、目線より高い部分を撮影するときに便利です。
(3) 主題別の立場の例
- リビング:部屋の角から広がりを強調、座った視点で家具を魅力的に
- キッチン:正面+少し斜めの視点で考え、出す
- 寝室:低めの位置から、リラックスした雰囲気を演出
- バスルーム:鏡の映り込みを避けつつ、開放感を意識
3. 外観撮影の方法(エクステリアフォト)
▶外観撮影のポイント
- 建築の特徴を最大限に引き出す
- 周囲の環境と調和をもたらす
(1) 機材と基本設定
使用機材
広角レンズ(14mm〜35mm) or 標準レンズ(35mm〜50mm)
→ 広角でダイナミックに、標準レンズで歪みを抑えた自然な仕上がりに。
三脚
→長時間露光やHDR撮影に必須。
ドローン(必要に応じて)
→上空からの俯瞰撮影で建物全体の魅力を伝えます。
カメラ設定
- ISO:100〜400(低ノイズを維持)
- 絞り:F8〜F16(建物全体をシャープに)
- シャッタースピード:天候や時間帯に応じて調整(1/200秒〜長時間露光)
(2) 光と天候を活かす
朝と夕方の「ゴールデンアワー」に撮影
→ 柔らかい光で建物の質感を感動する。
曇りの日はディテールを際立たせるチャンス
→ 強い影が出ないため、均一なライティングで建築のディテールを捉えやすい。
夜景撮影(ブルーアワー)
→ 日没後30分〜1時間ベスト。建物のライトアップと自然光が絶妙に調和する。
(3) 構図とアングル
歪みを防ぐために建物の真正面から撮影
→遠くから望遠レンズ(50mm以上)で撮ると自然なパースが可能。
斜めからの撮影で立体感を出す
→建物の思い込みを見せる構図を意識。
周囲の要素を活かす
→木や空、歩道などをフレームに入れ、建物を忘れる。
ローアングルで迫力を演出
→ 高層ビルやモダン建築に効果的。
4. 外観撮影の撮影ポジション
▶ ポイント
- 建築の個性を活かすポジション選びが重要
- 広角・望遠の使い分けで印象を変える
(1) 基本的なポジション
建物の真正面から撮る(クラシックで安定した構図)
→ シンメトリーなデザインの建物に最適。
建物の角(斜め45度)から捉える(考える)
→ 立体感が強調、よりダイナミックな印象に。
低めのポジション(ローアングル)で撮る(迫力を演出)
→ 高層ビルや現代建築をより力強く見せる。
高い位置から俯瞰で描く(ドローン・屋上から)
→ 建物全体の形状や周囲の環境を含めたダイナミックな構図が可能。
(2)撮影
床から150cm前後(基本)
→視線の高さに近く、自然な遠近感が得られる。
ローアングル(床から50〜100cm)
→ 建物の高さを強調し、迫力を持てるさを。
ハイアングル(建物の2階以上の高さ)
→ ドローンや高いところから撮ることで、建物と周囲の関係性をより明確に表現できる。
(3) 建物の種類別位置例
- 高層ビル:ローアングル+広角レンズでスケール感を強調
- 伝統的な建築:真正面+対称的な構図で落ち着いた印象に
- モダンな住宅:斜めから撮る、光と影のコントラストを意識
5.ブラケット撮影と合成(HDR処理)の方法
建築撮影では、室内外の明暗差が激しいシーン窓の外が白飛びする場合や室内が暗くなるような問題がブラケット撮影(露出合成)です
ここでは、ブラケット撮影の方法とHDR合成の手順を詳しく解説します。
1.ブラケット撮影とは?
ブラケット(Bracketing)とは、異なる露出(明るさ)で複数枚の写真を撮影し、それを合成する技法です。
建築撮影でのブラケット撮影の目的
- 室内と窓の外を正しく表現する(白飛び・黒つぶれ)
- 光と影のバランスを最適化
- リアルなディテールを再現
2.ブラケット撮影の手順
三脚を使う
→ カメラのブレを防止、全ての画像
カメラの設定をマニュアルモードにする
→絞り(F8〜F16)とISO200~400(シャッタースピードのみを変更して露出調整)
ブラケット撮影モードを設定する(AEB機能)
→ 「±2EV(「±2EV(3枚)」または「±3EV(5枚)」の設定が一般的
(例)
1️⃣標準露出(適正露出)
2️⃣暗め(−2EV) → 明るい
3️⃣明るめ(+2EV)→ 暗い部分
6. HDR合成(露出合成)の手順
(1)ソフトウェアの選択
Adobe Lightroom(HDR機能)
Adobe Photoshop(手動レイヤーマスク合成)
Photomatix(高度なHDR処理)
LightroomのHDR機能が最も簡単で自然な仕上がりになりやすい。
(2) LightroomでのHDR合成の手順
1️⃣Lightroomで撮影したブラケット写真を読み込む
2️⃣複数の写真を選択し「写真」→「HDR結合」→「HDRへ結合」
3️⃣ゴースト除去を調整(風で動いた葉や車などのブレを補正)
4️⃣自然なHDR合成が完了(必要に応じて露出やコントラストを微調整)
5️⃣仕上げの色調整とパース補正を行って完了
✅ポイント
- HDR合成後の味が自然にならないように調整
- とんでもないHDR処理を避け、ナチュラルな仕上がりを目指す
7.ブラケット撮影+HDR合成の実践例
ケース1:室内撮影(窓の外が白飛びする)
ブラケット撮影 → HDR合成で室内と窓の外のバランスつもり
ケース2:外観撮影(夜景で明暗差が大きい)
ブラケット撮影 → HDR合成で建物の光と空のディテールを同時表現
ケース3:複雑なライティングの建築(ホテル・レストラン)
Photoshopの手動レイヤーマスクを活用し、より精密に光のバランスを調整
8. まとめ
ブラケット撮影で適切な露出の写真を複数撮影する
LightroomでHDR合成を行い、バランスを調整する
Photoshopで細かい調整をして、より自然な仕上がりにする
ブラケット撮影+HDR合成を活用すれば、肉眼で見たイメージに近いリアルな建築写真が作れる
- 内観撮影
- 広角レンズと自然光を上手く使い、水平・垂直を意識する
- 部屋の四隅や入り口付近から広がるを意識した部屋
- 撮影の高さは120〜140cmが基本(状況に応じて調整)
- 外観撮影
- 光の時間帯と構図が鍵
- 建物の真正面または斜め45度の位置が基本
- ローアングルで迫力を、ハイアングルで全体像を表現
ご参考までにしていただけますと幸いです。
様々な撮影方法がありますので実践していただき、自分なりに調整や実験をしていただくと素敵な写真になると思います。
ご覧いただきありがとうございました。